「愛国」(あいこく)は、明治から昭和初期まで「神力」「亀ノ尾」とともに日本の米の三大品種の一つでした。愛国から派生した品種は多く、その子孫には、コシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれなど歴代の人気種も含まれます 。
「愛国」の起源は、元宮城県古川農業試験場長佐々木武彦氏の研究により、現在の丸森町舘矢間が発祥の地であることが確定され、丸森町の舘矢間まちづくりセンターには、記念碑が建立されています。
記念碑には次のように書かれています。
豊穣の稲「愛国」発祥の地
水稲の歴史的な大品種「愛国」は伊具郡舘矢間村で誕生した。 明治二十二年十二月舘矢間村館山の養蚕家本多三學が、静岡県南伊豆郡朝日村(現下田市)の同業者外岡由利蔵から取寄せた品種名不詳の種籾がことの発端である。 その種籾は、舘矢間村小田の篤農家、窪田長八郎、日下内蔵治、佐藤俊十郎、佐藤伊吉が試作した結果抜群の多収性が認められ、明治二十五年に坪刈り調査に立ち合った伊具郡書記森善太郎と同郡米作改良教師八尋一郎により「愛国」と命名された。 「愛国」は伊具郡内から県下全域へと急速に普及し、更に東日本を中心とした全国各地で最大作付面積が三十三万ヘクタールに及び、昭和初期に至るまでの長期間作付けされた。 また、品種改良の親としても優れ、子孫には「陸羽一三二号」、「農林一号」をはじめ、「コシヒカリ」、「ササニシキ」、「ひとめぼれ」など有名な大品種が多数生まれている。 「愛国」は耐倒伏性と耐病性に優れた多収穫品種として普及したが、近年になって「コシヒカリ」などの強い耐冷性やご飯の食味を左右する粘りも「愛国」に由来することが明らかにされた。 後に「愛国」となった種籾は、静岡県賀茂郡青市村(現南伊豆町)の高橋安兵衛が育成した「身上早生」と判明した。静岡県では普及面積が僅かで目立たなかった品種を、舘矢間村では「愛国」に生まれ変わらせて全国に広め、日本の稲作に多大な恩恵をもたらした功績は特筆に値する。 種籾を舘矢間村にもたらした本多三學はもとより、秘められた資質を見抜いた篤農家、「愛国」と命名して支援した伊具郡の稲作指導者、「愛国」の作付けに励んだ舘矢間村の稲作農家、以上の関係者の先見性とひたむきな取組みがなかったら、今日の「コシヒカリ」も「ひとめぼれ」もこの世に誕生できなかったはずである。 この舘矢間村の先人たちが成し遂げた偉業を末永く後世に語り継ぎ、丸森町のさらなる飛躍を願い、ここに類まれな豊穣の稲「愛国」発祥地の記念碑を建立する。
平成二十二年十一月二十日 豊穣の稲「愛国」顕彰事業実行委員会委員長 渡辺政巳